2011年9月4日日曜日

■第2回 核・原子力のない未来をめざす市民集会 @台東 を開催

2011827日、『第2回 核・原子力のない未来をめざす市民集会 @台東――311原発震災以降を私たちはどう生きるか』を開催しました。(於:東京都立産業貿易センター台東館)。
二部構成で開催した市民集会―SESSIONⅠでは、「福島第一原発で何が起きたか?」、その真相について田中三彦さん(サイエンスライター)から、福島で現在なお進行する被曝の実態、子どもたちの実情などを「20ミリシーベルト基準を棚上げして除染始まる 避難・疎開のとき」と題して、中手聖一さん(子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク代表)にお聴きしました。SESSIONⅡは、京都大学原子炉実験所助教の小出裕章さんの講演。小出さんには、「核=原子力の本質 原子力発電で、私たちが知っておきたいこと」と題してお話をお聞きしました。
当日は、約700人の方々にお集まりいただき、また、急きょ会場に駆けつけてくださいました、元原子炉格納容器設計技術者である後藤政志さんがコメントしてくださる場面もあり、盛会のうちに終了しました。


USTREAM配信中
原子力資料情報室 http://www.cnic.jp/
岩上安身IWJチャンネル2  http://iwakamiyasumi.com/


福島第一原発で何が起きたか?

騙しのテクニックを駆使した、東電のシミュレーション解析!
田中三彦さんは、東京電力福島第一原発で何が起きたか、真相を究明することが重要であると前置きし、話を起こした。そもそも、流布されているような、津波と電源喪失を主要因に、「超特急でメルトダウンが起こった」とする、「地震動」の影響を無視した東電のシミュレーション解析は「騙しのテクニック」だ、と断罪。
メルトダウンは誰の目にも明らかだ。問題は、地震の揺れで原発の中枢構造が壊れたり、機能が喪失した――つまり、配管破損による冷却材喪失事故が起きた可能性が大であることだ。根拠は? 田中さんは、1号機の原子炉格納容器が、「安全上の未解決問題」(*)を抱えているMARKⅠ型原子炉格納容器であることに注目。地震の揺れ→配管破損→冷却材喪失事故→大量の水蒸気が圧力抑制室に噴出→圧力抑制機能の喪失→格納容器の圧力が設計圧力を超えて上昇→事故を誘発したというのが1号機事故の全容であろう、と自らのデータ解析結果を示しながら問題提起した。MARKⅠ型の格納容器を設置している原発はもとより、地震動による機器の損傷破壊が疑われる今、全国にある54基の原発を即時停止すべき、と結論した。
*安全上の未解決問題:MARKⅠ型原子炉格納容器は、圧力抑制室の構造強度問題や圧力抑制機能の喪失が容易に起こる可能性が大きい欠陥格納容器であることが、1970年代前半に米国GEの技術者により内部告発されていた。


20ミリシーベルト基準を棚上げして除染始まる―避難・疎開のとき
視えない敵は放射能だけでない! この国のかたちを本気で変えるとき
中手聖一さんは、事故直後から一貫して被曝の危険と汚染の現状を福島県内外で訴えてきた。県下では放射能安全対策キャンペーンが張られた。20ミリシーベルト、30ミリシーベルトは問題外で、100ミリシーベルトを超えたら心配すればよい、と言って回ったのがリスクアドバイザー山下俊一氏だ。県内の医療関係者、学校教員に向けても徹底的な言論統制が敷かれ、子どもたちは放射能管理区域のような場所で生活している。厖大な放射能汚染の現状を調査し、結果を記者発表しても報道されない、不安をあおる記事は掲載しないということが堂々と行われているという。放射能のことを「視えない敵」というが、視えない敵は放射能だけでない。この国のかたちを本気で変えないと、一度事故が起これば私たちはあっという間に犠牲者にされるのだ。今なすべきは「1ミリシーベルト以上の汚染区域は選択的避難支援の対象にする避難区域の拡充」だ。汚染はすでに福島を超えた。私たちは福島を超えて、皆さんと手を携えてこれを求めていきたい、とアピールする中手さんに、会場から大きな拍手とエールが送られた。


*「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」へのカンパ総額は、488032円。内訳は、会場カンパ403032円、賛同団体余剰金57000円、東京・生活者ネットワーク作成小出裕章さんブックレット『核=原子力に未来はあるか』売り上げの全額カンパ28000円です。カンパは、同ネットワーク代表の中手聖一さんに託しました。ご協力ありがとうございました。


核=原子力の本質―原子力発電で、私たちが知っておきたいこと

誰も責任を取らない原子力の世界 そして騙されることも罪である
SESSIONⅡは、「核=原子力の本質 原子力発電で、私たちが知っておきたいこと」と題した小出裕章さんの講演。前半で小出さんは、原子力発電のしくみ、都市部を避け危険を過疎地に押し付けてきた原発立地の現状、315日東京にも飛んできた放射性物質(内部被ばく線量は1時間の吸入によって17μシーベルトを超えた)、事故がなくても悲惨な原子力、ウラン採掘から始まる被曝問題、石炭・石油・液化天然ガスに比べ余りにも貧弱なウラン鉱、すでに生み出してしまった厖大な核分裂生成物・死の灰と処分問題・・・と進め、あらゆる意味で原子力は最悪の選択であると結論した。
講演後半では、「誰も責任を取らない原子力の世界」に言及。日本は「もんじゅ」だけでもすでに1兆円の金を捨てた、1億円の詐欺をすれば1年の実刑だ。であるならば1兆円の詐欺をしたら何年の刑になるだろう、1万年だ。そして原子力の世界で責任を取るべき立場にある原子力委員会の学者たち、官僚、大臣…仮に百人を摘発したとしても1100年の刑になる。それほどの犯罪がこの国で、原子力という世界で行われているのだ。そして、それでもなお実現不可能な「もんじゅ」をあきらめない。高速増殖炉計画を手放さないのはなぜか? その理由は高速増殖炉が生み出す高純度、核分裂性のプルトニウムにある。長崎型の原爆材料である。核兵器を開発する能力を保持したいがためである。原子力に平和利用も軍事利用もない、あるのは平時利用と戦時利用ということだ、と核=原子力をめぐる本質を語った。折々の講演で小出さんは「騙されることも、また罪だ」というメッセージを私たちに投げかける。多くの日本人は核=原子力の真実を知らされないまま、知ろうとしないまま今日まで暮らしてきた。そして事故は起きてしまった。3.11以降、変わってしまった世界で、私たちはどう生きるか、それだけが今問われている。終盤で小出さんは、「私のやりたいことは、原子力を選んだことに責任のない子どもたちを放射能から守りたい。ただ、それだけだ。皆さんの知恵と力を貸してほしい」と問いかけ、講演を終えた。
=原子力を選択し、それを許してきたのは私たちおとな社会だ。そして、これから永続する放射線被曝の影響をもっとも多く受けるのは若者、子ども、乳幼児、まだ生まれていない次世代の子どもたちである。汚染食品を食べたくないのであれば、次世代に無毒化することのできない放射性廃物を、負の遺産を先送りしたくないと思うのであれば、核兵器を廃絶したいと考えるのであれば、日本にある54基の原発を廃炉にすることから始めねばならない。


3.11以降を、私たちはどう生きるか、が問われている
この日、3人の発言者がそれぞれの切り口から語られたのは、戦後66年、私たちが築いてきた日本社会とはいったい何だったのか? という問いかけでもありました。戦後日本の高度経済成長は世界の注目を集めましたが、一方で、国内の第一次産業を衰退させ、公害・薬害・環境汚染を引き起こしたばかりか、世界のあらゆる国々の資源を収奪してきた歴史でした。先の戦争に突き進んだのも、バブル経済に狂奔したのも、今回の原発震災事故を引き起こしたのも、その要因は、私たちが上意下達型、ヒエラルキー型の社会構造に甘んじ、自治の尊さを忘れ、人任せと無責任を真に問い返すことをしてこなかった帰結なのではないか、という問いかけでもありました。
集会後には150に及ぶアンケートが集まり、実行委員会には今日なお、メールによるコメントが届いています。賛同団体の一つ、「わんぱくエコフレンズ」(登録者:善財裕美さん)の善財さんもそのお一人。そして、お寄せいただいたメールには、善財さんが誘ってくださった河野由宇さん(高校1年生)の「感想文」が添えられていました。
311当時は中学3年生だった河野さんのコメントは、SESSIONⅠ~SESSIONⅡを通底するテーマ、小出裕章さんがRCサクセション・忌野清志郎さんの曲に託してくださった「騙されるな!」、「視えないものを見よ」、「隠された核=原子力の真実を知ることからしか始まらない」ことを確実に言い当て、素直に、かつ深い洞察力で理解してくださるものでした。私たちはもっと若い人たちに期待してよいし、つながりたい、311を境に変わってしまった世界の中で、ようやく希望の種を見つけた、――そういうメッセージでした。少しでも良好な市民社会を次代に引き継いでいく責任がおとなの側にある、と改めて銘じることとなったメッセージです。
311から半年。いまなお収束しない東京電力福島第一原発事故は、私たちの住まう日本で、起こるべくして起こった「人災」です。3.11を契機に、核=原子力の時代と決別し、持続可能な次の時代への転換を、私たちは描き、実現に向けなくてはなりません。
*感想文は、河野由宇さんの承諾を得て、以下に掲載します


河野由宇(高校1年生)さんから「感想文」が寄せられました

私が今回講演会に参加した感想を一言で書くと「まさか」という感じでした。
一つ目の「まさか」は、「まさか講演会に行くなんて」でした。初め、善財さんに会って話をした時には「仕事は退屈でしょうが、やっていただきます」と言われたので、本当に退屈なものを想像していました。それで講演会に行くことになるとは思ってもいませんでしたから、驚きました。

二つ目の「まさか」は、「まさか原発が地震によってこわれていたなんて」でした。ここから急に講演会の話になりますが、私はずっと、原発は津波で非常電源が失われたからこわれ、爆発したのだと思っていました。しかし、最初に講演した田中三彦さんは、原発、特に一号機は、地震によってパイプが破損したことが爆発の原因であると説明しました。また、国や東電はこの事実を認めてしまうと、全国にある一号機と同じ型の原発全てを止めることになる上、他の原発についても、津波対策と電源確保だけでは安全と言うことはできなくなってしまうため、このことについてあまり触れないようにしている、というより、永遠に遠ざけておきたいのだ、と言っていました。それだけでも驚きでしたが、田中さんが言うには、改ざんしたデータを使ってシミュレーションを行い「早期にメルトダウンした」ということを発表することで、地震問題を隠したというのです。まさか国がこのようなことをして、危険と分かっている原発を動かそうとするなんて、信じ難いことでした。さらに驚きなのは、アメリカで、すでに一号機の格納容器と同じMARKⅠ型の格納容器には欠陥がある、と指摘されていたことです。どうやらMARKⅠ型の格納容器は設計圧力、つまり想定される最大圧力に少し余裕を持たせた数値を超えて、圧力が上昇するという欠陥があったらしいです。どうして圧力が異常に上昇してしまうのかは少し難しくてよく分からなかったのですが、30年以上も前に分かっていた欠陥を放置していたというのは、国民よりも原発を優先していたということで、これも驚きでした。そして民主主義を唱えながら、実際には国民をないがしろにした日本の今までの政府に対し、嫌悪感を感じずにはいられませんでした。そしてこの感情は、次の中手聖一さんの話を聞いて、さらに大きくなりました。

中手さんが言うには、福島では戦時下の日本のようなきびしい情報統制がされていたそうです。学者がやってきて放射能はそれほど危険なものではないと言って回ったそうです。中手さんがそれを疑い、他の人たちに、危険があるのではないか、と言うとののしられ、新聞記者などのジャーナリズムにうったえても一切報道されず、多くの人が無用な被ばくを受けたそうです。私は学校で、戦争中の日本がいかにひどかったかを習いましたが、まさか今の日本にそのようなことが起きているとは思いもしませんでした。
中手さんの講演が終わると休憩になりました。休憩中、私はいろんなことを考えました。終戦後、日本は戦争中にしたことを恥じ、もうそのようなことのないように多くの制度を変え、教育を変えたのだと思っていました。もし今、戦時中と同じことがされているとしたら、一体何のせいなのでしょうか。

休憩が終わり、小出裕章さんの講演が始まりました。小出さんの話の中で印象が強いのは石油の可採年数についてのものです。それによると、石油は、現在言われているほどひっ迫した状態ではないそうです。いずれ枯渇することはあるでしょうが、どうやら新エネルギー開発は間に合いそうだ、と思いました。もう一つ印象に残ったのが、「核」という言葉のことです。なんと、英語のNUCLEARをある時は「核」と訳し、ある時は「原子力」と訳しているそうです。つまりアメリカからすると、日本は「核開発」をしているのです。小出さんは、技術に「平和利用」も「軍事利用」もない、と言っていました。原発は核兵器です。多くの人の未来をうばい、我々人類が一生かけても消しきれない傷を残す兵器です。そんなものを日本が54基も持っているというのです。私はまだ高校生です。選挙権はまだありませんが、講演会に参加した人たちが、日本から、世界から核をなくしてくれることを願っています。

原発によって放射能汚染された食材が、大した検査もせずに風評被害はよくない、などと言って、無理に出荷されています。福島の人たちは汚染した土地で汚染したものを食べる生活をよぎなくされています。私としては、国民を大切にしない国に任せず、民間の企業や団体がしっかりと検査をして、その全てについて値を公表し、判断を国民一人一人に委ねるべきではないかと思います。なるべく早く福島の人たちが救われることを心から願っています。

2011年7月18日月曜日

第2回 核・原子力のない未来をめざす市民集会@台東

核・原子力のない未来をめざす市民集会実行委員会は、原子力発電から脱し、核・原子力の時代にピリオドを打ちたいと集まったメンバーによって200912月に発足しました。翌年2月には、国のエネルギー基本計画を根拠に進められようとしている、新規原発計画(上関原子力発電所・予定地山口県上関町長島田ノ浦)の問題性について、広く市民にアピールする場が必要である緊急性から、同時に、原子力発電の問題点について、一人ひとりが理解し判断する機会が必要であると考えたことから、「第1回 核・原子力のない未来をめざす市民集会@練馬」を開催しました。311日に発生した未曽有の東日本大震災は、その復興に向けて入口にたったばかりですが、そうした復興支援を妨げているのが、原発震災を目の当たりにすることとなった「福島第一原発事故」であることは言うまでもありません。人類史に大きく記載されることになった、福島第一原発事故は依然、収束に向かう兆しは見られず、今後、たとえ爆発的事象は回避できたとしても、厖大な放射線、放射性物質が大気に、海に、土壌にまき散らされ、降り積もることは避けられません。そもそも確立された技術ではない原発を、世界に類をみない地震列島日本の海岸線に、54機も林立させてきた政府、原子力利権集団の責任は重く、しかし、傲慢に原発を建て並べることに抗しきれなかった、かつ電力の恩恵を享受してきたエネルギー多消費地・東京に暮らす私たち市民も、その加害性から免れることはできません。その意味で、「3.11以降を、私たちはどう生きるか」が問われています。一方で、依然として観念的な原発容認論が聞かれることに、私たちは驚きを禁じ得ませんし、今学ばなくていつ学ぶのか、といった意を大きくしているところです。

「第2回 核・原子力のない未来をめざす市民集会@台東」を下記の日程で開催します。福島原発事故はなぜ起き、今何が起きているか、その真相について田中三彦さんから、核・原子力発電の本質、問題点について小出裕章さんからお聴きします。福島での被曝の問題、子どもたちの実情については、中手聖一さんに報告していただきます。多数のご参加、ご賛同をお待ちします。

8.27集会チラシをお届けします。ご自由にプリントの上、拡げてください。

第2回 核・原子力のない未来をめざす市民集会@台東
3.11
原発震災以降を
私たちはどう生きるか
日時 2011.8.27() 12001630 (開場1130~)
*東京メトロ銀座線、東武伊勢崎線浅草駅から徒歩5分*都営浅草線浅草駅から徒歩8
プログラム
SESSIONⅠ 12:00
福島第一原発で、何が起きているか
田中三彦さん/サイエンスライター・元原子炉圧力容器設計技術者
20ミリシーベルト基準を棚上げして除染始まる―避難・疎開のとき
中手聖一さん/子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク代表
SESSIONⅡ 14:30
=原子力の本質―原子力発電で、私たちが知っておきたいこと
小出裕章さん/原子力安全問題研究者・京都大学原子炉実験所助教

主 催:核・原子力のない未来をめざす市民集会実行委員会
協 賛:原子力資料情報室/東京・生活者ネットワーク
資料代:1000円 
座席数:700席(先着申込み順)
予約が必要です。終了いたしました。
連絡先:TEL0332009115 FAX0332009274(市民活動共同事務所 担当:上坂・加藤)
Eメール kohoseikatsusha.net 

市民集会開催にあたり、賛同団体を募っています(一口1000円、何口でも/口数にかかわらず入場チケット1枚)。団体名・当日参加者名を明記の上、メール・電話・FAXでお申し出ください。当日のプログラムに団体名を掲載させていただきます。賛同余剰金は、“子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク”への活動カンパとさせていただきます。会場でもカンパを募ります。
不明な点は、お問い合わせください。

講師プロフィール
田中三彦(たなか・ みつひこ)
サイエンスライター。元原子炉圧力容器設計技術者。1943年栃木県生まれ。68年東京工業大学工学部生産機械工学科卒業。68年バブコック日立入社。福島第一原発4号機などの原子炉圧力容器の設計に関わる。77年退社。サイエンスライターとして、主に科学および科学思想に関わる翻訳・著述活動を行う。「柏崎刈羽原発の閉鎖を訴える科学者・技術者の会」呼びかけ人。中央大学非常勤講師。訳書に、A.ダマシオ「デカルトの誤り」(筑摩書房)、同「無意識の脳、自己意識の脳」(講談社)、L.ムロディナウ「たまたま」(ダイヤモンド社)ほか多数。著書に、「科学という考え方」(晶文社)、「原発はなぜ危険か」(岩波書店)など。
http://kkheisa.blog117.fc2.com/

中手聖一(なかて・せいいち)
子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク代表。原発震災後に数人の仲間たちと「原発震災復興・福島会議」を立ち上げ、福島老朽原発を考える会の協力のもとに、学校の放射線量を測定。調査からはすべての対象校が高濃度に汚染されているだけでなく、側溝や芝生などでカウント値が高いホットスポットがあることが分かった。この結果にもとづいて、福島県に対して新学期の延期、詳細調査などを要請。その後、「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」を結成。政府や福島県に20ミリシーベルト基準撤回、被曝線量低下のための具体策の実行、放射線リスクアドバイザーの交代などを要求している。
http://kofdomofukushima.at.webry.info/

小出裕章(こいで・ひろあき)
京都大学原子炉実験所助教。1949年東京生まれ。東北大学原子核工学科卒業、同大学院修了。原子力の「平和」利用に深く夢を抱き勉学にいそしむが、大学闘争に出会い、女川原発建設に対する反対運動に接する機会を得た中で核と原子力が一体であること、原子力が差別の上にしか成り立たないことを知る。以降、原子力を廃絶させることを自らの課題とする。研究テーマは核・原子力施設による環境汚染の解明、原子力施設事故の解析など。伊方原発訴訟住民側証人。著書に、「放射能汚染の現実を超えて」(北斗出版)ほか多数。近著に、「隠される原子力・核の真実 原子力の専門家が原発に反対するわけ」(創史社)、「原発のウソ」(扶桑社)など。1987年から年度版百科事典「イミダス」の原子力の章を執筆。
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/



2011年7月12日火曜日

第1回 核・原子力のない未来をめざす市民集会@練馬

「核=原子力」発電の問題点を
あらためて問う
2010227(土)14001630(開場1330~)
武蔵大学江古田キャンパス 8号館 8603教室
■主 催:核・原子力のない未来をめざす市民集会実行委員会
■プログラム
<講演140015:30
「核=原子力」発電の問題点をあらためて問う
小出裕章さん/京都大学原子炉実験所助教
<緊急報告 15301550
今、上関で何が起きているか
澤井正子さん/原子力資料情報室
<質疑応答 15501630
*賛同団体によるブースにお立ち寄りください。資料等はご自由にお持ち帰りください。

講師プロフィール●小出裕章(こいで・ひろあき)/京都大学原子炉実験所助教。1949年東京生まれ。東北大学原子核工学科卒、同大学院修了。原子力の「平和」利用に夢を抱き原子核工学を専攻するが、大学闘争や女川原子力発電所建設反対運動に接する中で、核=原子力が差別の上にしか成り立たないことを知る。以降、原子力を廃絶させることを自らの課題とする。専門は放射線計測、原子力安全。伊方原発訴訟住民側証人。人形峠ウラン残土訴訟で住民側に立ち、地裁・高裁あわせて8通の意見書を提出。著書に「放射能汚染の現実を超えて」(北斗出版1992)、「原子力と共存できるか」(かもがわ出版1997)、「人形峠ウラン鉱害裁判-核のゴミの後始末を求めて」(批評社2001)など。1987年から年度版百科事典「イミダス」の原子力の章を執筆。

227日に開催の「核・原子力のない未来をめざす市民集会@練馬」は、約180人の参加者にお集まりいただき、終了しました。

「『核=原子力』発電の問題点をあらためて問う」と題した講演で、小出裕章さんは、▲放射線エネルギーの巨大さと被曝の危険▲破綻した核燃料サイクル政策と高速増殖炉▲プルサーマル計画と使用済みMOX燃料の行方▲そもそも、原発がCO2を出さないってホント?!――などのテーマについてわかりやすく話され、核と原子力が同じものであること、無毒化する技術を持たないまま、原発が絶えず生み出し続ける放射性廃(棄)物の問題について言及。加えて、1986426日、旧ソ連チェルノブイリ原発で起きた事故を振り返り、原子力発電所が一度事故を起こせば全地球汚染・被曝を免れないこと、今日、国策として進められている原子力利用においては、原発はカネと引き換えに過疎地に押し付けられており、利益を受ける集団と危険を押し付けられる集団が乖離していて、被曝の危険と「許容量」は「がまんさせられ量」になっていること、自分に加えられる危害を容認できるか、謂われのない危害を他者に加えることを見過ごすかはどこかの専門家が決めるのではないし、国に任せていい問題でもない、と結ばれました。
ゲストスピーカーとしてお迎えした澤井正子さん(原子力資料情報室)からは、山口県上関町に建設が予定されている「上関原子力発電所」阻止行動について、また予定地が瀬戸内海に残された生物多様性のホットスポットであることなどが報告されました。
今回の市民集会を機に、引き続き国の原子力政策の行方を注視し、原発から脱し、核・原子力のない未来社会の構築をめざしたいと思います。予想を超える賛同個人・団体に集まっていただき余剰金がありましたので、上関原子力発電所計画阻止行動に携わる、「上関原発を建てさせない祝島島民の会」「虹のカヤック隊」「長島の自然を守る会」の3団体に寄付させていただきました。ありがとうございました。


*この日の会場は武蔵大学江古田キャンパス。市民集会賛同団体の一つ、「環境まちづくりNPOエコメッセ練馬」が同校舎屋上に設置した太陽光発電パネル、「練馬元気力発電所1号機」をみることができる会場となった。



■小出裕章さん、澤井正子さんへの質問と回答を、掲載します。

Q日本が東南アジアやその他の国に原発を輸出しようとしている(CO2削減を売りにして、また排出権などの獲得もあり)現状を憂えている。日本の一市民として、これを阻止する方法はないのだろうか? 莫大なお金と政府の方針・応援により、無力な市民ができることは? 
小出●申し訳ありませんが、もしその方法を私が知っていれば、私がやります。しかし、集会の最後に賢治さんの文章を引いてお伝えしたように、それぞれの人が個性の優れる方面において、止むなき表現をすれば、止められる希望はあると思います。
澤井●日本の原発メーカーがアジアへ売り込みに行くのは、国内でもう沢山は売れないという現状があります。しかしご指摘のとおり、CO2対策として原発を売り込もうというメーカーの思惑と連動して、民主党政権は、2020年までにCO225%削減するという「温暖化基本法案」を閣議決定(3/12)しました。したがって、このような政治の流れを止めることが一つの大きな視点です。そのためには、例えば、地元選出の国会議員、民主党の議員(都議会、区議会)に対して働きかけることが必要でしょう。一方このような議員を選んでいる地元(たとえば練馬)で、「原発は温暖化対策にならない」ということを、身近な友人たちと勉強したり、人が集まる機会にアピールすることもできるのではなでしょうか。また自分の生活をまず点検してみることも必要でしょう。日本の中で、「原発いらない!」という声が強くなれば、アジアの人々にも伝わります。それが原発を導入しようという動きをストップする力になること願っています。いきなり政治の流れを大きく転換することは、むずかしいと思います。小さなアクションから始めましょう! しかし決して、後戻りしない積み重ねが重要だと思います。

Q二酸化炭素(CO2)をだすメカニズムと、そのことに対し、原発推進派はこれまでどう反論しているか? 原発からの排熱を、温暖化に対しどのようにカウントしているのか? 
小出●現在の温暖化の議論は二酸化炭素など温室効果ガスによる効果に限られており、直接の排熱に対する評価はありません。また、原子力推進派による原子力が出す二酸化炭素の評価については当日の配布資料にも書きましたように、彼らの都合のいいシナリオに基づいています。
澤井●電力会社が宣伝しているように、「原発は“発電時”にはCO2を出さない」ので、あって、発電以外の部分は、核燃料の輸送、製造、廃棄物の管理や処理に膨大な石油、電気を消費し、結局相当量のCO2を出しています(当日の小出さんの資料参照)。公式の統計では、発電の廃熱は温暖化にカウントされていません。内容的に議論がありますが、廃熱による海の温度上昇は問題とするべきと考えます。また、温度上昇による海からのCO2放出も問題とするべきという指摘もあります。

Q原発は、放射性物質の危険性や地震に対するぜい弱性もさることながら、時間的、経済的に見合わないとする意見がアメリカやドイツで見られますが、どう思われますか? 原発に頼らない施策として、エネルギーを減らす省エネルギーとCOを出さない自然エネルギーの導入が不可欠と考えますが、アメリカで進められている「スマートグリッド」について有効な施策と思われますか? 
小出●原子力はいかなる尺度に照らしても、見合わないと私は思います。スマートグリッドはもちろん有効です。特に小規模分散型の電源を活かすためには必須の技術です
澤井●原発は、資本主義的な経済活動の原則から考えれば、時間的(廃棄物対策に数百年~)、経済的(利益も大きいが、膨大な投資が必要:例えば上関原発は2基で8000億円)に、リスクが大きすぎる発電所です。もし大事故があれば、計算できないような経費がかかります。東京電力では、柏崎刈羽原発が地震に襲われたため、7基の原発が約2年間完全に停止し、今でも5基は停止状態で、いつ運転再開できるか不明の状態です。そのために、東京電力は休止していた火力発電(石油、石炭)を立ち上げ、燃料費のために初めて赤字決算に陥りました。原発は、安定的電源にはなり得ません。原発を減らし、再生可能エネルギーを増やすことは絶対に必要で、そのためにスマートグリッドを整備することは歓迎されることと思います。ただ、そのための結局膨大な資本投資が必要で、その辺のメリット、デメリットをきちんと検討する必要があると思います。
Q六ヶ所の(事故)現状とこれからについて教えてください。 
小出●ガラス固化体の製造は今後も困難を極めると思います。仮に無理に再稼働をさせたとしても、すぐにまたトラブルを起こして、停止すると私は思います。
澤井●六ヶ所再処理工場の試験運転は、最終段階で止まっています。高レベル放射性廃棄物をガラスとまぜて固化する作業がうまくいかないためです。また、この作業の中で様々な事故、トラブルを起こし、昨年1月には、ガラス固化体製造施設の中で、高レベル放射性廃棄物が約150リットル漏えいする事故を起こしています。これらの事故対策について、日本原燃は201010月までに予定の作業をすべて終了し、本格稼働に移行するとしていますが、現在でも約3カ月分の工程の遅延があり、事実上今年中に稼働を開始することは困難と思います。

Q国は「原発だけだとウラン鉱の5%しか利用出来ないが、再処理すると95%まで利用出来る」としているが、本当ですか? 
小出●講演でもお答えしましたが、天然のウランのうち核分裂性のウラン(U-235)0.7%しかありません。一方、天然ウランのうち99.3%を占める非核分裂性(U-238)は原子炉内で中性子を受けると核分裂性のPu-239に変わります。そのPu-239も中性子を受けると非核分裂性のプルトニウム(Pu-240)に変わってしまいます。原子力推進派の主張によれば、彼らの思惑通り、完璧に再処理が進み、Pu-239を利用できるようになると、U-235だけに比べて60倍の資源量になると言われています。

Qペレットはどこで誰が作っているのですか。その方々の健康状態は。運んでいる時の雨が当った時の蒸気の危険性はどうなのですか。 
小出●ペレットは燃料加工工場で作っています。日本にある燃料加工工場は以下の通りです。ペレット製造工場で扱うのは低濃縮ウランです。MOX燃料を扱うようになれば、プルトニウムはウランに比べて10万倍も危険が高いため、作業はすべて自動化するしかありません。しかし、ウランの場合、半減期が著しく長く、逆に言うと放射能が低いため、もちろん作業服などは着て、マスクもしていますが、ペレットに手で触ることもできます。吸入すれば、それなりの被曝をしますので作業に注意も必要です。実際にどの程度の被曝をしているかについては、もちろん報告されるはずで、時々事故で被ばくをしたとの報道もあります。でも、基本的には原子力発電所での被ばくに比べればはるかに少ないはずです。 集会でお見せしたスライドで蒸気が立っていたのは、フランスから高レベル放射性廃棄物輸送容器が六ケ所村に返還されてきた時のものです。容器内の廃物が熱を発生するため、容器全体が熱くなっていて、それに雨が降りかかって蒸気になったものです。蒸気自体は雨が蒸発したものですから特別な危険はありません。


Q祝島のこと、民主党は調査とか、見直しとか考えているのでしょうか。
澤井●民主党のマニフェストでも、原子力発電は「安全を確認しつつ推進」と明記しており、上関原発計画に見直しなどを検討しているという情報はありません。

Q友人から数ケ月前に、「週刊文春」(だったと思います)に、青森県が、日本の中でガンの死亡率No.1という結果が出た、と書いてあったと教えてくれました。その原因などについて、把握していらっしゃる事はありますでしょうか? 
小出●疫学的なデータは、常に不確かさが付きまといます。原爆被爆者にがんや白血病が多いというデータも、10万人もの被爆者を何十年にもわたって調査した結果、ようやくわかってきたことです。私自身は、青森県ががんの死亡率No.1であるかどうか知りませんが、仮に今現在そういうデータがあったとしても、その原因を特定することは大変難しいと思います。

Q国は将来の四国地方での電力確保に上関原発が必要といっていますが、それは確実なデータから言っているのですか?
澤井●中国電力は、現在でも余剰電力を他の電力会社に売電しており、上関原発は必要な状態ではありません。しかし中国電力は、オール電化の推進などで今後需要が増えるという予測をたて、建設の理由としています。

Q再処理工場で、プルトニウムを取り出す為に陶器を溶かす時、硝酸に熱を加えてとおっしゃいましたが、その熱源は何でしょうか。どのくらいのエネルギーが必要なのでしょうか? そのようなことを含めて、原発はCO2を出さないと言いきれるのでしょうか? 
小出●再処理工場は原爆を作るための中心工場であるため、高度の機密に守られています。 燃料ペレットは溶解槽という容器で溶かされますが、私はその熱源を知りません。しかし、再処理工場全体が爆発性の物質を使用する化学工場ですので、ガスなどを熱源に使っているはずはないと思います。安全面から考えれば、おそらく電気を熱源にしていると思います。エネルギーの量についても情報がありませんが、たとえば、推進派による二酸化炭素放出量の評価では、ウラン濃縮の作業による寄与が6割から7割の割合を占め、再処理などは微々たるものとしか評価されていませんので、それほど大量なエネルギーを使うわけではないのだと思います。

Q上関原発建設中止を求める活動をしています。この2日間、国会議員へのロビイングを行いました。建設予定地の素晴らしい自然環境を壊して良いのかという点に絞り話をし、関心をもってもらおうとしてきました。原発の有無を論じない方法をとり、ともかく田ノ浦湾の埋め立てをさせてはならないと話しましたが、本日のお話を聞き、この方法に迷いが生じてしまいそうです。小出先生はこれまで院内集会で議員向けに本日のような話をされたことがありますか。あったとしたら、その反応、参加議員の集まりはどの様でしたでしょうか。 
小出●原発を止めるためには多様な取り組みが必要ですので、どの方法が一番いいかはわかりません。でも、私であれば、自然環境を壊すか壊さないかにかかわらず、原子力を認めたくありませんので、正面から原子力廃絶の議論をしようと思います。また、私は院内集会に呼ばれたことはありません。個人的なことを言って申し訳ありませんが、私は政治や組織は大嫌いですので、喜んでいきたいとは思いませんが、もしそのような機会を与えられるのであれば、お伺いします。

Q放射能はどうして存在していたのか(私の素朴な疑問)。100年前の研究者により発見されなかった方がよかったように思ってしまうのですが、研究者としてどのように思っていらっしゃるのですか。
小出●宇宙の成立はビッグバンだという説が有力です。そのビッグバンでは陽子と中性子が多様に組み合わさった原子核ができたはずですが、安定的に存在できる原子核は陽子と中性子が特定の個数ずつ組み合わさったものだけです。それ以外の原子核はいずれにしても不安定で、原子核崩壊を起こして別の原子核に変わっていきます。そのスピードが速い原子核もあれば、遅い原子核もあります。たとえば、非核分裂性のウラン(U-238)が原子核崩壊するスピードは遅く、45億年たつと半分になります。地球は46億年の寿命を持っていると考えられており、地球が生まれた時に地球上に存在していたU-238は今日までに約半分が別の原子核(鉛206という原子核です)に変わり、約半分が今でも地球上に残っていることになります。放射能など見つからなかった方がいいとは思います。しかし、100年前に見つけなくても、科学はいずれ見つけたでしょう。問題は、その科学を使いこなすほどに人間が賢くないということでしょう。

Q体内の分子結合エネルギー数eVより大きな放射線のエネルギーを受けた場合、体内では何が起きるのでしょうか? 細胞レベルと分子レベルで。
放射線によごされたゴミや水に触れた人・生物は、あるいは口より取り込んだ人は、いわゆる“被曝”といえるのでしょうか? “被曝した”という状態は何をもって判断されるのでしょうか? 地球被曝という事が良くわかりましたが、人間への具体的な影響、どんな病気の拡がりとなって現れているのでしょうか? 
小出●放射線は、電離放射線と非電離放射線に大別されます。非電離放射線とはいわゆる電磁波のことで、最近ようやくその危険性が問題にされるようになりました。普通放射線という場合には電離放射線をさします。つまり物質を「電離(イオン化)」するということで、分子結合を切断することを意味します。切断された分子結合が遺伝子のものであれば、直接的に影響が生じますし、たとえば水の分子であったりすれば、水素イオン、水酸イオンなどが、周辺の分子とどのような反応を起こすかで影響が変わります。被曝とは放射線を浴びることを示します。したがって放射性物質を体内に取り込んだりすれば、もちろん被曝です。ただし、天然にも放射性物質は存在していますので、人間を含めた生物は常に被曝をしているともいえます。大量の被曝は、死、火傷、嘔吐、下痢など様々な急性障害を生みます。急性障害が出ない程度の微量な被曝の場合には、がん、白血病、遺伝的障害など晩発的障害と呼ばれる障害が生まれます。

Qイタイイタイ病や水俣病が生物濃縮によって生物体内に蓄積されたことを考えると、放射性物質もたとえ微量であっても、この生物濃縮の過程を通して体内に蓄積されるといえるでしょうか。
小出●もちろん、言えます。

Q妊婦の定期検診で、子宮内の子ども(胎児)の様子を写し出して、説明するようですが、どの程度の影響があるのでしょうか。当然のように行われていますが……
小出●申し訳ありませんが、妊婦の定期検診でどのような検査がなされているのか私は知りません。よくなされているのはエコーではないかと思いますが、それは超音波検査であり、放射ではありません。そのため、被曝もありません。ごく特殊な場合に透視という検査がなされるかもしれませんが、それは大量の被曝をします。もちろんしないに越したことはありませんので、透視検査をすると医師が言う場合にはそれが本当に必要かどうか十分の説明を受けるべきと思います。